忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2024年05月04日08:22 】 |
「おっちゃん」の死

いつものテント群から離れたところで、「おっちゃん」がテントの中で死んでいるのが発見された。近くのテントの住民が、しばらく姿を見ていないために不審に思ってテントの中をのぞき、「おっちゃん」が息絶えているのをみつけた。

死後、2週間くらいだという。血を吐いて仰向けに倒れていた。酒飲みだったというので、内臓がかなり悪くなっていたのだろう。テント生活者がテントの中で凍死したということはあまり聞かないが、血を吐いて亡くなっていることは時々ある。酒が原因で胃腸がぼろぼろになってしまうのだ。

「おっちゃん」は近所の者にいわせると「偏屈者」で、あまり近隣との付き合いがなかったという。亡くなってから発見されるまで2週間もかかったということが、近隣との結びつきの薄さを物語っている。

「おっちゃん」が近所付き合いがよかったら、もっと早くに発見されて命が助かったのかどうかは分からないが、死に至ることがなくても、ホームレスだって病気になるし、お金に困ることもあるし、事件に巻き込まれることもある。そんな時に頼りになるのは、はやり、近隣のホームレスである。同じように血を吐いて倒れたが、近所のホームレスがうめき声に気づいて救急車を呼び、一命をとりとめたという話も実際にある。一般の社会であれ、ホームレスの社会であれ、人間関係は大切なのだ。

ホームレスの社会では、本名や過去は必要ではない。偽名を使っているホームレスは多い。統計があるわけではないが、客死しても名前も分からず、無縁仏として葬られるホームレスの数は少なくはないだろうと思う。もっとも、中には、遺族が見つかっているのに遺族から遺骨の引き取りを拒否される場合もあるというが・・・。そして、「おっちゃん」も、ただ「おっちゃん」と呼ばれていただけだし、本名や経歴といったことは、死んだ「おっちゃん」以外にに誰も知らない。

「お前なぁ。死んだ時のために、本籍地と本名と生年月日を書いたメモをテントのどこかにおいとけよ。死んだときくらい、人に迷惑かからんようにしとけ」

例によって「友人」に悪態をつくと、「友人」は、「そやなぁ。このまま突然に心臓が止まったら、俺が誰かわからんままに死んでいくんやなぁ」と珍しくしんみりとした表情で答えた。

考えてみれば、僕も彼をニックネームで呼ぶだけで、その本名は知らない。

PR
【2007年02月11日23:40 】 | 未選択 | コメント(0) | トラックバック()
<<ホームレスはお金持ち・・・な人もいる | ホーム |長居公園での芝居による抵抗を深読みする>>
コメント
コメントの投稿











トラックバック
トラックバックURL

前ページ| ホーム |次ページ

忍者ブログ [PR]