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僕がホームレスのコミュニティと親しくなり始めた頃、「あの男はヤクザだから近寄らない方がいい」と忠告を受けたオヤジがいる。そのオヤジは老齢であったが、目つきが鋭く、年齢に似合わず筋肉質で、夏のことであったからTシャツの襟元や袖の上腕部からは刺青が見えた。コミュのメンバーも些細なことで殴られ、110番通報したこともあったという。 しかし、たとえ元ヤクザであっても、ホームレスである以上、暴力団の構成員でなくなっているはずであり、「あの男はヤクザだ」という言葉は多くの場合、「あの男はヤクザっぽい」もしくは「元ヤクザである」と表現するのが正しい。 そのオヤジと僕が親しくなるのに時間はかからなかった。オヤジは無類の動物好きで、テントの周囲で犬、猫はもちろん、ウサギやオウムを飼育していた。僕は動物の話をきっかけとしてオヤジと距離を縮めたが、些細なことで怒鳴りあいの口論をしたこともある。こういうコワオモテとは本気でケンカして、そのあと仲直りした方が、もっと親しく、より対等な関係になれるのである。(ただし、ケンカするときは自分に正義がなければならない) そのオヤジが70歳で生活保護を受けることとなり、僕は車で荷物をオヤジの新居まで運ぶ手伝いをした。親父は、25年ぶりに畳の上の生活に戻るのだ。 僕は今まで聞いたことのなかった、オヤジの過去を尋ねた。 最近は、テキヤの仲介とか雑誌販売の元締めで、生活保護なんて受けてなくても食べて行けたというのだ。 いやぁ、話を聞いてみたら、なんだか、めっちゃヤクザそのものなんだけど・・・。 一応の「わきまえ」はしてるってことか。で、今回生活保護を受ける気になったのはなんでだろう。 普通、ホームレスは心のどこかで元の生活に戻りたいと考えながらも、意欲を十分に持つことができなかったり、きっかけをつかむことができなかったりして、そのままの生活を続けていることが多い。このオヤジの場合は、自ら望んでホームレスとなり、精一杯、ホームレスとして生き抜いてきた、そんな感じすらする。 世間一般では新年度が始まる4月。オヤジにとっては定年退職だったような気がしないでもない. PR |
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