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【2024年05月19日17:02 】 |
酔いどれのホームレス
ホームレスの世界は多様であって、一概にホームレスが悲惨であると決め付けるわけにはいかない。それが、僕が経験から得た持論である。テント生活をしているホームレスには「明るいテント生活」を送っている者がけっこういる。前回、前々回と「明るいテント生活」を送っているホームレスのことに触れたが、客観的には、悲惨と呼ぶにふさわしいホームレスも現実に存在する。ただ、その悲惨な状態もまた、多様なのであるが・・・。

ホームレス同士では、相手が本名らしき名前を名乗った場合はその名前で呼ぶが、そうでなければ、だいたいが何らかのその人物の特徴をとらえて、ニックネームで呼ぶ。背が高ければ「のっぽ」、青い帽子を被っていれば「青帽」、熊本訛りがあれば「ばってん」という具合である。
 
そして、その男は、大阪市内のある地名で呼ばれている。その土地から流れてきたというのが由来であるらしい。実際はちがうのだが、ここでは仮に四貫島ということにしておこう。
 
四貫島は去年の暮れまでブルーシートをロープで張っただけのみすぼらしいテントに住んでいた。しかし、あることで、周囲のテント居住者からさんざんに文句を言われ、ケンカをしてテントを出てしまった。暖冬とはいえ、冷え込む季節に四貫島はベンチや橋の下で毛布にくるまって寝ている。ひとつのテント・コミュニティから疎外されてしまった四貫島は、他のテント・コミュニティからも相手にされない。それほど広い範囲ではないだろうが、噂はすぐに広まるもので、近隣コミュニティからはもう受け入れてくれないのだ。
 
「金、貸してくれや」
四貫島は、僕の顔をみるとねだる。500玉一枚を渡す。貸すのではない、与えるのだ。四貫島は、すでに還暦を過ぎている。若い頃は、工事現場で働いていたが、年齢とともに体力もなくなり、仕事も減って、野宿生活を始めて15年だという。今は、空き缶を拾って一日に千数百円の現金を手にする。その空き缶を拾うためのキャリアも、今使っているのは、僕がコーナンで買ってきて与えたものだ。そして、手にした現金のほとんどを安い焼酎に替えてしまう。
 
「酒はなぁ、若い頃から飲んでるんや。博打は金がないからやめたけど、酒はやめられん」ワンカップの焼酎を1日に最低でも6本は飲んでいる。金があれば、いくらでも飲めるらしい。食事はコンビニの廃棄弁当をもらっているらしいが、どうみても食べているよりも飲んでいる方が多い。煙草もすっているが、煙草は、案外に新品が落ちているとか。ごみ箱をあさって雑誌も拾ってくる。
 
「ええ加減、酒控えろや。死ぬで、ほんまに」
何度もそういうのだが、言うだけ無駄だろう。
 
「死んでもええねん。この世になんも未練はないわ」
そういう四貫島は、酒が飲めなくなるというので施設はいやだというし、何度か救急車で病院に運ばれたが、やっぱり酒が恋しくて勝手に病院から抜け出してしまう。まともな就職なんて、本人もできる年齢でも状態でもないと思っている。今は、酒が飲めたらそれでいいという生活だ。
 
客観的には、どうみても不幸な生き方なのだが、本人は、無理して畳の上での生活を送るよりも、野垂れ死にするまで、今のままの生活を送る方がいいという。野宿生活をよしとしているわけではないが、自分ではどうすることもできないので、成り行きに任せている。周囲のテント生活者からさえも「怠け者」と呼ばれてしまっている。
 
行政は、「自立支援」というけれど、こういうタイプのホームレスをどうやって「自立支援」するのだ?いくら施設をつくったり、福祉の枠を広げても解決はしないだろう。
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【2007年02月20日04:45 】 | 未選択 | コメント(0) | トラックバック()
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